【迷子電話相談室】やらなきゃいけないことができません
※「迷子電話相談室」は電話をなくした迷子のための電話相談室です。相談室開設以来、ここには一度も電話がかかってきたことがありません。そこで、当相談室では「きっと、こういう悩みを相談したかったに違いない」と想像し、電話をなくした迷子たちの相談を毎週火曜日の夜に公開することにしました。(内容は個人が特定できないように変更しています。)
夢見るマネキンです。
本当は店頭に立ってコマーシャルしなければならないんですが、どうもそれができなくて。
最近はモーニングコールに応えることもできません。それで困っています。
夢の中にずっといられたらいいのにって思うんですよね。
私、その中なら自由に動けるんです。ずっと立ちっぱなしなんかじゃなくて、踊ることだってできる。ドレスだって着れる。
だってね、夢の世界では青い手の男の人が私を助けてくれるんです。
あの人たちがいれば、私なんでもできちゃうの。
でも、現実に戻ればまた全然動けない。
ドレスも着られない。
冴えない顔の私がいるだけ。
こんな私が許せないから、モーニングコールのベルがいっそう疎ましくなる。
あの青い手の男の人が現実にもいてくれたらな。
あれはいったい誰なんだろう? どうして私の夢の中で、私を助けてくれるの?
ああ、またモーニングコールだ。もう夢の世界にはいられない。
電話に出なくっちゃ。
【迷子電話相談室】ちょっとのことでイラつきます
※「迷子電話相談室」は電話をなくした迷子のための電話相談室です。相談室開設以来、ここには一度も電話がかかってきたことがありません。そこで、当相談室では「きっと、こういう悩みを相談したかったに違いない」と想像し、電話をなくした迷子たちの相談を毎週火曜日の夜に公開することにしました。(内容は個人が特定できないように変更しています。)
高い塔です。誰もここまで来られないほど高い塔です。
だから、誰も僕のことをわかってくれません。
孤独です。でも、それが高い塔の生き方だからしょうがないと思っています。
高い塔のことなんて、知らないでしょう。
だから言いますけど、てっぺんはすごく揺れやすいんです。ほんとに小さな風でもぐらぐら揺れるんです。それがすごく僕をイライラさせます。
なんでこんなことで、なんでこんなことのために。
僕がすぐ揺れるのをわかってないからこういうことをするんです。
僕の邪魔しかしないなら、もうこんな世界なくなったほうがいいよ、とも思います。
今日はよく晴れています。こういう日は、川に僕の姿がてっぺんまで映ります。
川に映った僕のてっぺんは、ずっと川下のところで水に揺られてゆらゆら揺れています。
【本日】2015.04.19金沢文学フリマ出展します
金沢文学フリマ、深森花苑出展します。ブースは「う-19」です。
今回は新刊が出ます!
「廃屋」300円
最愛の妻の亡き後、写真家はまだ現像されていないフィルムを発見する。そこに写っていたのはーー。
今と過去を行きつ帰りつしながら、問う一人の人間の存在の重み。
たぶん初めて書いた、純文学っぽい小説です。今日が虚しい、という人に読んでほしい小説です。
そして、既刊からは『コトダマミクジ』、『野原X』も持っていきます。
『コトダマミクジ』は今回もタロット持っていくので、お試しで占ってみたい人歓迎です。
う-19ブースで お待ちしております!
■金沢文学フリマ開催情報
http://bunfree.net/?kanazawa_bun01
■金沢文学フリマネットカタログ
https://c.bunfree.net/c/kanazawa01
【迷子電話相談室】すぐに躓いてしまいます
※「迷子電話相談室」は電話をなくした迷子のための電話相談室です。相談室開設以来、ここには一度も電話がかかってきたことがありません。そこで、当相談室では「きっと、こういう悩みを相談したかったに違いない」と想像し、電話をなくした迷子たちの相談を毎週火曜日の夜に公開することにしました。(内容は個人が特定できないように変更しています。)
マウンテンバイクです。普通の自転車になるんじゃつまらないな、と思ってマウンテンバイクになることを選択しました。やっぱり山が好きだったし、難しいことを達成するのってかっこいいと思ったから。
でも、今のところ失敗ばかりです。
走る場所は、僕の知っている平らな地面じゃなくて、でこぼこした砂利道や急な崖山みたいな場所ばかり。雨が降ってる中を走らされたこともあります。当然、まっすぐになんて走れなくて、すぐに躓いて、転倒して、傷だらけです。
そんな僕に乗るご主人も、イライラして怒ってばっかり。僕を初めて見たときは、目をキラキラさせて、期待に胸を膨らませていたけれど、今となっては過去の話です。
ご主人の思うように動けない自分にも腹が立ちます。
いまだって、マウンテンバイクになるって決めたときの夢を諦めたわけじゃないですよ。僕だって、夢を叶えたいんです。
でも、こんなに大変だとは思っていませんでした。
ご主人が心安らかになるのなら辞めたほうがいいのかな、と思う日もあります。
僕も普通の自転車としては充分動けるわけだし。
だけど、僕が諦めてしまったら、ご主人に山の頂上からの景色を見せることはできなくなってしまいます。
それは悔しくて、嫌だなぁ、とも思います。
※注意※ この歌も負担に感じてしまうときは、がんばりすぎです。
いったん、前に進むことよりもHPの回復を優先させましょう。
【迷子電話相談室】夜に眠れません
※「迷子電話相談室」は電話をなくした迷子のための電話相談室です。相談室開設以来、ここには一度も電話がかかってきたことがありません。そこで、当相談室では「きっと、こういう悩みを相談したかったに違いない」と想像し、電話をなくした迷子たちの相談を毎週火曜日の夜に公開することにしました。(内容は個人が特定できないように変更しています。)
リビングの電灯です。
時計は午前3時21分をさしています。
誰もいません。
でも、僕はリビングを照らし続けています。
誰もいないけど、目の前を駆け抜けていくんです、小さな女の子とか鳥、それに大きな木やビルの数々が。
だって困るでしょ、明かりがないと。
リビングはいつも明るくないといけません。幸せな食卓は明るい照明から。いつの時代も言われてきたことでしょう。これは僕に課せられた当然の義務なんです。照らすことのできない電灯なんて、誰も必要としないじゃない。
だけど、ちょっと照らさなきゃいけないものが多すぎやしませんかね?
いつになったら眠れるんですかね。
僕も疲れてきました。
眠らなきゃって僕も思いますよ。でも、自分でもどうしたらいいかわからないんです。眠ろうとすればするほど気になることが次から次へと増えていくんです。
僕はどうしたら眠れるようになりますか?
【迷子電話相談室】旅に出たくありません
※「迷子電話相談室」は電話をなくした迷子のための電話相談室です。相談室開設以来、ここには一度も電話がかかってきたことがありません。そこで、当相談室では「きっと、こういう悩みを相談したかったに違いない」と想像し、電話をなくした迷子たちの相談を毎週火曜日の夜に公開することにしました。(内容は個人が特定できないように変更しています。)
こんばんは。結構、切迫しています。
実は、明日の朝、旅に出なくてはならないのです。
国の決まりで、この年になった者は親元を離れなければならなくて。私の周りの子はもう1年も2年も、場合によっては10年も前からどこに向かって旅に出るかを決めています。どこで宿を取って、どの町で暮らすのか。
私もいちおう決めました。でも、心の底からその町に行きたいと思っているのか今もよくわからないです。その町から送られてきた「決まりごと」も全部は覚えてないし……。
(ともだちもいなくなっちゃうな……。今までは、私がなにも喋れないで困っていると代わりに話してくれる子がいた。私は黙ってうなずいているだけでもよかった。明日からは、ひとりぼっち。)
こんな状態で旅に出なければいけないことが本当に不安です。町の人は私を受け入れてくれるのでしょうか……。
しかも、私は町までの地図を用意できませんでした。これも、本当は全部私が用意しなきゃいけないの。でも、見つからなかった……。どうしたら手に入るのか、私にはどうやってもわからなかった。他の子はみんな「地図を手に入れた」って言ってるのに……。
そうだ、夢があるんだ、他の子には。
「これがしたい」とか「ここにいきたい」とか。
昔、ママの作ったパンケーキを毎日食べれたら夢みたいだって言ったら、長老たちから笑われたっけ。
私、どうしても明日旅に出たくないんです。
どうしたらいいでしょうか……。
Music Video "Twilight" | UQiYO ウキヨ - YouTube
【迷子電話相談室】いてもいなくてもいいみたい
※「迷子電話相談室」は電話をなくした迷子のための電話相談室です。相談室開設以来、ここには一度も電話がかかってきたことがありません。そこで、当相談室では「きっと、こういう悩みを相談したかったに違いない」と想像し、電話をなくした迷子たちの相談を毎週火曜日の夜に公開することにしました。(内容は個人が特定できないように変更しています。)
街の広場のからくり時計です。80年代に作られた、定時になるとさまざまな音色の鐘がなり人形が踊り出す凝った作りのものです。
あの時代は、高層ビルがどんどんできあがり、ディスコクラブで朝まで踊る人がたくさんいました。他に類を見ない、華やかな時代でした。人々は必要な誰かに出会うために、私の周りで待ち合わせました。そして、定時がやってくると踊り出す人形を見上げ、鐘の音に耳を澄ませていました。そうした人たちのおかげで私は自分の存在意義を疑う必要がありませんでした。みんなが時間を間違えることのないよう、休むことなく一生懸命働いたのです。
しかし、三年ほど経つと、人々はあまり私のからくりに関心を持たなくなりました。まぁ、そんなものだ、と思いながらも私は仕事を続けました。人々は、まだ時計としての私を必要としていたからです。何年もの月日が流れ、鐘は半音ずれたり人形のペンキがはげたり、いろいろぼろが出てきました。それでも時計の仕事は一日も休まず続けていました。
ある時、私の目の前に白い紙が貼られました。
「故障中」
嘘です。私はきちんと動くことができます。その証拠に、針だって正しい時刻を示しているではありませんか。それに、私が動かなかったら時間がわからなくてみんなが困ってしまうでしょう。早くあの白いいたずら紙を剥がしてもらわなければ。しかし、私の前を通る人は何も困った様子がありませんでした。時計を見る代わりに、小さな白い箱の中の文字を見るのに忙しそうです。時代は変わってしまいました。
誰も私を見ないので、普段だったら口にしないいいかげんな歌をうたってみたりもしました。それでも状況は変わりませんでした。私はもう、いてもいなくてもいいみたいです。何のためにこんなにがんばってきたのか、少しむなしくなりました。私がやってきたことは、所詮、時代の潮流にあっというまに流されてしまう程度のことだったのでしょうか。それなら、私ができあがったばかりのあの華々しい時代に、もっと好きなように人生を送っていればよかった。私はかわいい女の子の姿をして、楽しい人生を歩んでいたはずです。
テンテンコ 「Good bye,Good girl 」(MV) - YouTube
※80年代に撮影されたように見えますが、実際は近年撮影された映像です。