フェンスに揺れるスカート

深森花苑のブログです。

藤子ファンでなくてもはまる!『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』を機械好きに勧めたい

先日、地上波で放送されていて、その録画をなんとな~く見ていた『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』。しかし、気がついたら前のめりになり、テレビにかじりつき、最後まで見てしまいました。この作品は、子供やドラえもん好きだけでなく、いろんな人に見てほしい!!と思い、私が感じたこの作品の魅力を極力ネタバレなしでまとめてみました。

 

どんな人にお勧め?

どんなに良い作品も万人がおもしろいと感じるわけではないので、特にどういう人にお勧めできるか、というところからしたいと思います。

まず、前提として筋書自体がおもしろいのでドラえもんのファンじゃなくても映画として充分楽しめるということは言っておきたいです。伏線の張り方やシチュエーションのディテールが子供騙しじゃなく、そういう意味でピクサーのアニメっぽさも感じました。

作品の内容としては、機械が好きな人、とりわけスチームパンクの世界観が好きな人エンジニア職の人に見てほしい内容でした。

で、公式が下のリンクなんですけど。

 

doraeiga.com

これだけ見ると、どこがスチームパンクなのかって思うでしょうけど、スチームパンクなんですよ

スチームパンクといえば、19世紀イギリスの雰囲気を連想される方が多いと思います。そして、その時代を舞台にした超有名作品といえば、シャーロック・ホームズ。国は違いますが、怪盗ルパン、ジュール・ヴェルヌの作品なんかもありますね。この辺りをモチーフにしたであろう登場人物がこの作品には複数出てきており、のび太も物語中でホームズの姿になります。

さらに、物語の舞台となるミュージアム飛空艇だったり、ミュージアムの展示物に天球儀をモチーフにしたものがあったり、ひみつ道具を作るのに使うのがフルメタルという謎の金属だったりします。ほらほら、スチームパンク好きには見慣れたものがたくさん出てきたでしょ? 主題歌もPerfumeですし「スチームパンク的な機械仕掛け感」は物語の重要な要素だったのだと思います。

私が地味に好きだったシーンに、ミュージアムの裏側の狭い道を通るシーンがあるんですが、その道の裏路地っぽさや配管のぐちゃぐちゃ具合もスチームパンクの精神を感じるんですよね……。時代設定が19世紀から22世紀になったというだけで。

 

そして、長編映画オリジナルキャラが「見習い道具職人(≒エンジニア)」という設定だからか、エンジニアあるあるネタが盛り込まれていて、それにも笑いました。一番笑ったのが、大事なプロジェクトで機械にコーヒーこぼしてプロジェクトが失敗に終わるという場面。……あるある。今はないと思うけど、デスクでコーヒー飲むの禁止って職場もあったもん……。ていうか22世紀になっても我々はこぼしたコーヒーに苦しめられるのですか……。いや、でも人間のする失敗なんて過去でも未来でもそんなものかもしれない。

 

魅力その1:ひみつ道具がインフラとして機能しているところが見られる

それでは、そろそろ作品の魅力を語っていきたいと思います。

まず、一つ目は「ひみつ道具がインフラとして機能しているところが見られる」ところでしょうか。すごく雑な言い方をすると、ドラえもんって未来で当たり前の道具に現代のわれわれが「すげー!」って驚いている話じゃないですか。異世界転生ものとかでよくあるパターンの逆バージョン。ただ、その「当たり前感」を醸し出してるのが未来から来たドラえもんセワシぐらいしかいないので、物語中でそのことを意識することはあまりなかったはずです。

ところが、この映画ではひみつ道具は誰でも使うもの」として描かれます。みんな抜け穴ボールペンでその辺移動していたり、ミュージアムのフロア移動にどこでもドアが使われているのには萌えました……。ドラえもんに詳しい人なら、画面中にさりげなく登場している道具を探す、という楽しみ方もできるでしょう。

ひみつ道具がふんだんに登場する一方で、タブレットのような現代と地続きっぽいアイテムも登場します。「いつかドラえもんひみつ道具が当たり前になる、こんな未来が来るのかも」と思わせてくれるのも夢を感じて良かったです。

ただし、これには落とし穴がありまして、ひみつ道具を誰でも使えるということは……。

 

魅力その2:敵も普通にひみつ道具使ってくる

……ということなんです。

ドラえもんを見たり読んだりしたことのある人なら、たぶん一度は思ったことがあるはずです。

ひみつ道具ってチートすぎるから、持ってる時点でドラえもん側の勝ちでしょ」

この作品では、それが通用しませんひみつ道具は「存在する」のが前提、つまり、ひみつ道具を持っているだけではだめで、その使い方がまずければ戦局は悪くなるのです。しずかちゃんはある道具を使ってカウンター攻撃する場面が一瞬映るんですが、頭脳プレーでさすがでした。あと作中で「きこりの泉」がとんでもない形で使われるんですよ……!

youtu.be

絵面が狂気じみててとても好きです。

ひみつ道具を持っているのが当たり前の世界では、単独で使うということはむしろ少なく、複数の道具の合わせ技になる……。技術進化の歴史もこんな道を歩んできたのでしょうか。ポンコツ×ポンコツポンコツ???」製作者のこんな問いかけも聞こえてきます。その時点では役に立つかどうかわからないものが使い方や場面次第で使えるものに変わる――これは、すべてのものづくりに携わる人へのメッセージだと思いました。

 

魅力その3:魔女宅、ラピュタアダムの創造……さまざまな作品へのオマージュ

最近ではどの作品でもオマージュを潜ませるのが当たり前になりすぎてる感がありますが、この作品ではあざとくない程度のオマージュが随所に見られました。そうそう、オマージュってこういう使い方をすべきだよね! 古き良きオマージュ。

特に魔女の宅急便ドラえもん「猫(型ロボット)が親友」という共通項があるわけですが、のび太が魔女宅のあの場面を彷彿とさせる台詞を吐いたときはこの後ドラえもんどうなっちゃうんだ!?とおおいに焦りました。みなさんもおおいに焦ってください。

あと『アダムの創造』と同じ構図のカットが出てくる場面があるんですが、あの絵の意味を考えると、いっそう胸に迫るものがありますね。ロボットに命を吹き込むことができるとしたら、それは何に依るのだろう。

 

魅力その4:描線がきれい

ディ○ニー作品の線の強弱・メリハリと言えば伝わるでしょうか。キャラクターを描く線が一定の太さではないんですよね。だから、とっても柔らかい印象になってます。

 

魅力その5:7等身のドラえもんが見られる

7等身ですよ。

頭でかすぎて実際には5等身ぐらいのような気もするけど。

 

いまひとつだったところ

いいところばっかりでもあれなので。

冒頭にも言ったとおり、この作品がめざしていたのは「未来のスチームパンク」だったと思うんですよね、たぶん。でも、絵を見ると全然スチームパンクじゃない。

私の推測ですが、スチームパンクを前面に出すとレトロ感も出てしまい、未来っぽく見えない、という理由で今のようなデザインになったのだと思います。でも、結果なにがテーマなのかよくわからなくなってしまった。さらに、それがキャッチコピーにも悪影響を与えてしまった気がします。ひみつ道具の「なぞ」とか、夢がかなうとか、物語の枝葉の部分だし、映画見るべき人を誘えるコピーでもなかったと思います。

飛空艇のビジュアルをメインに置いたら、ちゃんと未来感のあるスチームパンクになったと思うんだけどなぁ。

 

 

いろいろ言いましたが、本当に何度も見たくなるいい作品でした。

次は登場したひみつ道具全確認とかしてみたいです。