フェンスに揺れるスカート

深森花苑のブログです。幻想小説を書いています。

近道を探す

スーパーマーケットに行くまでの最短経路がわからない。川のせいだ。うねうねとカーブを描く舗装路が方向感覚を麻痺させる。

付き合わされるのはごめんだ。私は川の裏のまっすぐな道を歩いていた。毎日、毎日。たった二回、曲がり角を曲がるだけ。

強欲な人間なので、やがてそれでも満足がいかなくなった。
スーパーマーケットまでの道のりは直角に二度曲がるよりも斜辺をひたすら行くほうが近いはずだ。三平方じゃない定理によって。

私は近道を探すことにした。
川を越えたら、スーパーマーケットの位置を野生の嗅覚で感じ取りながら適切な場所で適度に曲がり角を曲がる。そうすれば目の前にスーパーマーケットが現れるはずだ。
(この辺りか)
曲がった先の道はまっすぐではなかった。緩やかなカーブ。川沿いの道だけが曲がっているわけではなかったのだ。方向感覚のずれが頭の中で修正できない角度になってくる。まずい。もしかしたら、いつもよりももっと遠回りをしているかもしれない。

五十歩も歩けば知らない道の終端で、辻向かいに見慣れた黒い石垣が現れた。え、と声が出そうになる。いつもスーパーマーケットへ行く道の途中でも見かける石垣だ。ただし、その出番はもっと後のほう。毎日、まっすぐ歩いていたと思っていた道は、かなり遠回りだったのだ。

私はうれしくなって、スーパーマーケットの帰り道、またその近道を歩こうとした。
けれど、私は曲がる道を間違えたようだ。さっきの道とは別の道に出た。老人ホームの窓から柔らかい灯りがぽつりぽつりと灯っている。それでもいつもと比べたらずっと早く家まで着いた。なんだ、こんなに早く行ける道があったんじゃないか。次からはもうまっすぐな道なんて歩かない。決意がほくほくとはずんだ。

今日は昼間の買い物だ。この前よりもずっと早くスーパーマーケットに行けるだろう。
私はこの前と同じ橋を渡り、同じ曲り道を曲がったはずだった。たくさんの植木鉢が玄関への階段を埋めていた。ミニバラ、ラナンキュラス、マーガレットにポーチュラカ
どうやら道を間違えたらしいことは、スーパーマーケットまでかなりの時間を要したことで気が付いた。