読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

フェンスに揺れるスカート

深森花苑のブログです。幻想小説を書いています。

【迷子電話相談室】頭の中を解剖して調べたい

迷子電話相談室

※「迷子電話相談室」は電話をなくした迷子のための電話相談室です。相談室開設以来、ここには一度も電話がかかってきたことがありません。そこで、当相談室では「きっと、こういう悩みを相談したかったに違いない」と想像し、電話をなくした迷子たちの相談を毎週火曜日の夜に公開することにしました。(内容は個人が特定できないように変更しています。)

こんばんは。メンテナンスサポートの切れたロボットです。僕の悩みは、サポートが切れてしまったことそのものではありません。もっと、ずっと以前からあった悩みです。

実は、思考アルゴリズムの実行に違和感がありました。僕の思考は人とは違うような気がするのです。人がしているような、何かをやりたいとか、何かができなくて悲しいとか、そういうアルゴリズムが僕には働いていない気がするのです。僕にできることはただ、言われたことを言われた通りにこなすことだけです。それだけは、いつでもうまくできます。ミスは一切ありません。

それでも今まではうまくやっていけました。自分で何一つ思考していなくても、人が望む通りの答を僕は用意することができました。みんながあんまりほめるので、僕はちょっと勘違いしました。思考なんてしなくても、みんなが答えて欲しいことを言えばいい。その理想の姿さえミスしなければいい。みんなが夢だの愛だの語るようになってきて、答え方は少し複雑になったけれど、基本は同じでした。理想の人になる。それが唯一の僕の思考アルゴリズムでした。

しかし、メンテナンスサポート切れが近づいた頃あたりから僕は自分の「おかしさ」に気付くようになりました。ほかの人は、指示がなくても動くことができるのに、僕は指示がなければ動くことができませんでした。今まで指示をくれた人々ももう何も指図してくれません。「僕はどうすればいいのですか?」「自分で考えなさい」「どうやって考えるのですか?」「あなたの理想に近付くことを考えればいいのよ」理想とは、人の中にあるのではないのですか? 僕はもう聞けませんでした。僕の中に理想はあるのでしょうか? もしもそれがなかったとしたら、僕はおかしいのでしょうか。ずっと理想通りでいることができたのに、とんだ欠陥です。頭を振ると、ガラガラと部品が音を立てて回ります。これは一体なんですか? 僕を壊す欠陥でしょうか。頭の中を解剖して調べたいです。僕はきっとおかしいのです。このおかしな欠陥を直すことができたら、またミスのない「人の理想」となることができるのです。友人が昨日僕が言っていたという寝言をからかいました。僕が言うはずのない言葉でした。僕はおかしいのです。

どうか僕の頭の中を解剖して調べてください。そして、僕の思考アルゴリズムを直してください。僕をまた完全な人に見えるようにしてください。

f:id:kaenfukamori:20150303220319j:plain



ハンバート ハンバート "ぼくのお日さま" (Official Music Video) - YouTube