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フェンスに揺れるスカート

深森花苑のブログです。幻想小説を書いています。

「読書会 ~ファンタジー小説編 もしも『第26回 日本ファンタジーノベル大賞』が(2014年に既存作品から選ぶ形式で)開催されたら~」レポート(後編)

もしも今年も日本ファンタジーノベル大賞が開催されていたら、大賞を獲るのはどの作品?というテーマで開催したこの読書会。前編では、参加者の皆さんからの推薦作やいま興味のある作品、そして、当日ゲスト参加してくださった第14回日本ファンタジーノベル大賞受賞者・西崎憲さんのお話を中心にレポートしました。後編では、いよいよ幻の第26回受賞作、ということで会場の皆さんが選んだ作品を発表!

……その前に。

当日は、ファンタジーについての様々な話も飛び交いました。その中からいくつか興味深かったトピックスをご紹介します。

 

ファンタジーには必ず「世界」がありますが、その「世界」ってみなさんにとってどんなものですか?

まずはKさんから出たこんな質問。口火を切った西崎さんの回答は……?

西崎さん「子どもの頃は、自分が死んだらこの世界がなくなってしまうような気がしていました。だから、既に死んだ肉親も自分の幻想の中の人だから、自分が生きているかぎりまだ生きてるんじゃないかな、なんて思ってます」

Hさん「『世界』を意識の壁に映された像と捉えるか、所与のものとして現実に構築されたものと捉えるか……」

西崎さん「受け手の問題なのかな、という気もするんですよね。世界は人の数だけあるはずだから、ちょっとずつ協力して世界を作っているんだろうな、と思うんです。通貨も、それがお金だと思っている人がいるから成り立つわけで、そうじゃなかったら世の中ひっくり返ってしまう。

 回想小説や旅の小説なんかも俺はファンタジーだと思うんだよね。つまり、時空が異なるものを書くと、ファンタジーになる。既に現実にはない世界のことを書いていることになるからね。自分の世界の中に昨日があり、今日があり、明日がある。そうした世界の連続性がどこか信じられない人は俺だけでなくて、『胡蝶の夢』の話でもわかるように何千年も前からいる。でも、そうして何千年も前からあるんだったら、やっぱり世界って現実に影響力を持つリアルなものとして認識していいんじゃないか、と思うんだよね。

 1冊の本を読んで、その後になにか行動を起こす人がいるかもしれない。本の内容は絵空事かもしれないけれど、現実に影響を及ぼすのなら、それはもう現実でしょ? どうしてみんなリアルとファンタジーって分けてしまいたがるんだろうと思います。政治的な言説だって、それが嘘か本当かは関係なくて、その言説によって現実の行動が変わってしまっているならそれは現実であると考えています」

 

M.Kさんは、バー店長のコエヌマさんに不意打ちのクエスチョン! 普段、ノンフィクションを書いているコエヌマさんに「自分と境遇が違う人について書くときに『フィクションっぽい』と思いながら書くことはありますか?」と質問しました。それにコエヌマさんからは「フィクションっぽいと思うときも、自分と共通点をみつけて、自分が理解できる形に置き換えながら書いている」と回答。この質問の真意は……?

M.Kさん「自分と境遇が違う人について書かれた本を読んでいて、それがフィクションっぽいと思うことってあると思うんです。結局、人は自分が生きている周りの世界のことしかわからないのではないでしょうか」

深森「妖精や魔法が飛び交うハイ・ファンタジーだと、現実とはまったく違う世界ですよね。その場合、読者はどうやって現実の世界とファンタジーの世界の折り合いをつけているのでしょうか? 『自分の生きている世界との共通点をみつける』というのが鍵なんですかね……」

如月さん「おそらく、そこには『こうあってほしい』『こうあってほしくない』という嗜好の問題が重要な気がします。例えば、花粉症の人は『眼を外して洗いたい』なんて言ったりしますよね。なぜそんなセリフが出てくるのかと言ったら、眼球を外したいけど実際には外れない人体構造への憎悪があるわけです。つまり『こうしたい』という願望と実際にはそうならない現実へのギャップがこのセリフを生んでいるんだと思うんです。

 妖精が存在する世界にどうして自分はいないんだろう。どうしてそんな世界から僕を連れ出していってくれないんだろう。そんな願望の積み重ねが物語を紡いでいるように思います」

Kさん「そういえば異世界に連れて行かれるファンタジーって多いですね」

西崎さん「わかりやすいのは囲碁や将棋の世界の人だよね。もう観念の世界が生きる場所のほぼすべてになっていて、現実の世界からは離れているような気がする。テレビゲームを子どもが長時間やっていると言葉が出にくくなる、という話も聞いたことがある。やりこめばやりこむほど、そちら側のルールに染まっていく、ということはあると思う」

 

恋愛はファンタジー? 動物が口を利いたらファンタジー?

M.Kさん「僕は恋愛のほうがよっぽどファンタジーだと思うんですけどね。女の子とデートしていても、瞬間的に『このほうが嘘くさい』と冷めてしまうんです」

西崎さん「確かに、恋愛ってルールに縛られている部分が多いよね」

Hさん「私自身はSNSで発信するにしても自分しか見ない日記を書くにしても『演じている自分』を感じます。素の自分ってなんだろう……と。自分自身がファンタジーを作り出してしまっている。それはジャンルとしてのファンタジーと一緒にしていいものなのか、自分自身まだ固まりきらないところです」

西崎さん「大体の人は、動物が口を利いたらファンタジーだと認識します。たとえ、竜のような空想上の生物が出てこなくても。どこで線を引くか。そして、その物語を読者として許せるかどうか。

 動物が口を利く、といっても、実際は幻想の象徴として口を利いていて、結果的に口を利いているのと同じ状態になっているだけ。動物が口を利くような不思議なことが前後で起こっていて、その一環として動物が口を利いています。でも、リアリズムの考え方だと『動物は人間と同じ言葉は話さない』となり、そこで物語がストップしてしまう。関連で物語を読みたがらない読者との溝は深い、と感じます」

深森「先程、M.Kさんが竜と勇者のごっこ遊びをした話をされてましたが、あれは『絶対に起こらない』とわかっているからこそのごっこ遊びなのかもしれないですね。いくら恋愛がファンタジーと思っていても恋愛のごっこ遊びはしないですよね

Kさん「でも、ままごと遊びはやりますよね?」

深森「それも『子どもの自分がいま母親になることはありえない』とわかっているからやるのではないでしょうか」

西崎さん「恋愛でファンタジー……書きづらいかもしれないね。ファンタジーと相性の悪い分野ってたくさんあるんだよ。不動産ファンタジーとか第二部上場ファンタジーとかさ」

 

幻の第26回受賞作決定!! そして西崎憲さんがいま気になっているファンタジーは?

※2015.2.18追記=============

日本ファンタジーノベル大賞」で検索してここにたどりつく人が結構いるようなので念のため追記させてください。

日本ファンタジーノベル大賞」は本来、公募制の新人賞文学賞(2017年2月21日更新:再開する日本ファンタジーノベル大賞の規定には『プロ・アマ問わず』の文字がありました。……この規定、休止以前にはありませんでしたよね? 詳しい方、コメントでいいので教えてください!)であり、2013年に行われた第25回を最後に休止しています。(2016年6月22日更新:2017年6月より公募再開されました!)2014年は作品の募集も行われておりません。詳しくは、新潮社のサイトをご覧ください。

日本ファンタジーノベル大賞|新潮社

この「幻の第26回受賞作」とは、日本ファンタジーノベル大賞の一部のファンが既存の作品から決めた「もしも2014年に日本ファンタジーノベル大賞が行われていたら受賞していたであろう作品」のことです。新潮社が行っている日本ファンタジーノベル大賞とは一切関係ありません。現在休止となってしまった日本ファンタジーノベル大賞ですが、この賞への話題性・盛り上がりが継続されれば何か状況が変わってくるかもしれない。そういう思いでこのイベントを企画しました。拙ブログを見て「2014年もファンノベやってたんだ」、「これが2014年の受賞作なんだ」と思ってしまった方々には誤解を与える余地があったことを深くお詫び申し上げます。

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いよいよ、幻の第26回日本ファンタジーノベル大賞受賞作決定……。

作品は坂口恭平さんの「徘徊タクシー」に決定しました!!

 

徘徊タクシー

徘徊タクシー

 

 

そして、西崎さんにもいま気になっているファンタジーについてお話してもらいました。 

西崎さん「アメリカの作家ナンシー・ウィラードの野球ファンタジー、すごくノスタルジックで少年まんが的展開も見せる作品、イギリスの1920年代の忘れられているけれど、ある詩人作家の、ファンタジー史に残る名作などの翻訳を考えています」

……というわけで、西崎憲さんの気になっているファンタジーは翻訳作品というかたちで近いうちに読むことができるかも!? 当日、読書会に参加した我々はもう少し詳しくお話を聞きましたが、どちらもおもしろそうな作品ですよ!!(あー、しゃべりたい)

 

本当にお忙しい中、来てくださった西崎憲さん、お店を開けてくださったコエヌマカズユキさん、ありがとうございました!!

そして、ご来場いただいたファンタジーファンのみなさんありがとうございました!!

 

今年もファンタジーをもっと楽しんでもらうための企画を画策したいと思っていますので、レポートを読んで面白そうだと思った方はぜひご参加くださいね。